平成27年度税制改正で消費税の国内取引の改正によりリバースチャージ方式が導入され、平成27年10月から実際に適用されます。
このリバースチャージ方式とは、インターネットを介して行われるサービスについて、国内取引の判定基準が今までと変わることに伴い、一定の取引の消費税の納税義務者を仕入れをした側にするものです。
改正の背景として、これまで海外事業者がインターネットを介して行っていた電子書籍や音楽配信などは、消費税が課税されず価格競争の面で日本企業に不利との声がありました。
そこで、海外事業者にも日本の消費税を課税できるようにしようとするのが国内取引の改正であり、リバースチャージ方式です。
なお、消費税の納税義務は、基準期間の課税売上高が原則1,000万円以下であれば、免除されます。(免税事業者)
そのため、お小遣い程度の収入を得ている個人事業者には、関係のない話です。
消費税の国内取引の判定の改正
27年度税制改正により、インターネットを介して行われる電子書籍や音楽配信などの取引について国内取引の判定が下記に変更されました。
- 改正前 サービスをする者(海外事業者など)の住所地で判定
- 改正後 サービスを受ける者(日本人や日本企業)の住所地で判定
これまでKindleの電子書籍など住所が海外にある外国法人は消費税が課税されませんでしたが、これからは課税されることになります。
なお、楽天のKoboはカナダのKobo.incが提供しているため、消費税が課税されていません。
注意)この27年度税制改正は海外事業者が行うサービスに対するもので、国内事業者のサービスは今までどおり変わりません。
参照:国税庁HP「国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税の見直し」より
電気通信利用役務の提供の具体的な取引
海外事業者がインターネットを介して行うサービスを正確には「電気通信利用役務の提供」と言います。
(-_-;)名前が長いなぁ
具体的には、次のような取引が想定されます。
引用:「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A 問2」より
- インターネット等を介して行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲ ームなどの様々なアプリケーションを含みます。)の配信
- 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
- 顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
- インターネット等を通じた広告の配信・掲載
- インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス (商品の掲載料金等)
- インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
- インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営 する事業者から掲載料等を徴するもの
- インターネットを介して行う英会話教室 など
リバースチャージ方式の仕訳を考えてみよう
リバースチャージ方式とは、事業者向けに行う電気通信利用役務の提供に係る課税方式です。(B to Bが対象)
電子書籍や音楽など消費者向けの電気通信利用役務の提供は通常の課税取引と同じ処理です。(B to Cが対象)
電気通信利用役務の提供の仕訳を考えるときは、まず2つにわけます。
一つは、広告など取引相手が事業者に限定されるサービス「事業者向け電気通信利用役務の提供に係る課税方式」、
もう一つは、電子書籍や音楽配信など消費者向けのサービス「消費者向けの電気通信利用役務の提供に係る課税方式」です。
前者の課税方式のみがリバースチャージ方式が適用されることになります。
以下、具体例で確認します。
リバースチャージ方式の仕訳をアドワーズとアドセンスで考える
①googleのAdWords(アドワーズ)で1,000円を支払った場合
[改正前](不課税仕入)
広告宣伝費/預金 1,000円
[改正後](特定課税仕入)
広告宣伝費/預金 1,000円
仮払消費税/仮受消費税 80円
本来、売上側のグーグルが80円を納税するところを、仕入側で納税することになります。
なお、課税売上割合が95%以上になる場合は、仮払消費税と仮受消費税が相殺されるため、納税額に影響ありません。
仕訳を起こしておくのは、申告書に特定課税仕入れを別枠で記載するためです。
期末の時点で課税売上割合が95%以上と判明したら、特定課税仕入れの仮払消費税と仮受消費税は、逆仕訳で相殺したほうが分かりやすくなります。(仮受消費税/仮払消費税 80円)
②googleのAdSense(アドセンス)で1,000円を受け取った場合
[改正前](免税売上)
預金/売上 1,000円
[改正後](不課税売上)
預金/売上 1,000円
消費者向けの電気通信利用役務の提供に係る課税方式の仕訳
電子書籍などの消費者向けの商品は、外国企業に納税義務がありますが、本当に納税してくれるか不透明なため、国税庁に登録した事業者(登録国外事業者)に限り、書類の保存を要件に仕入税額控除が可能となります。
例)電子書籍を1,000円で購入した場合
[改正前](不課税仕入)
書籍代/預金 1,000円
[改正後](課税仕入)
・相手が登録国外事業者でない場合
書籍代/預金 1,000円
・相手が登録国外事業者の場合
書籍代/預金 1,000円
仮払消費税/書籍代 74円
登録国外事業者の名簿一覧 ※追記:平成27年10月15日 ※追記平成28年3月14日
登録国外事業者の名簿一覧が国税庁より見直しの発表がありました。(2016.2.19)
[参考資料]
引用┃国税庁ホームページ
名簿にある企業から電気通信利用役務の提供を受けた場合は、その中身が事業者向けか消費者向けかに関係なく仕入税額控除ができます。
ただし、登録国外事業者の登録番号等が記載された請求書等の保存を要件としています。
課税売上割合95%以上と簡易課税制度の事業者は適用対象外
リバースチャージ方式は、課税売上割合95%未満の場合のみ適用されます。
したがって、課税売上割合95%以上の事業者と簡易課税制度の事業者は、これまでどおりの処理で大丈夫です。
まとめ
インターネットの拡大で取引方法が多様になり、国もそれに対応するために消費税も複雑になってきました。
経理として仕訳を入力する側は、事務負担が増えてたまったものではありません。
そこで処理の合理化とミス防止のために、勘定科目を消費税の区分が異なる取引先ごとに設定するなどの対応が必要になってきそうです。
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