小規模な介護事業の経営者のなかには、経理をどうしたらいいのか分からず困っている人もいるのではないでしょうか。
特に起業したばかりの小規模な介護事業者は、時間も資金もないため、経理が悩みのタネになっています。
また、平成27年度の介護報酬の減額で財政面で経営の厳しさが増しています。
そこでこの記事は、起業したばかりの小規模な介護事業の経営者のために、介護事業の経理のコツを紹介します。
この記事を読むことで、経理を外注に出さず自計化することで、少しでも資金繰りを節約して欲しいと思います。
経理には簿記3級の知識で充分
介護事業にかぎらず経理業務をするには、最低でも簿記3級程度の知識が必要になります。
しかし逆に言えば、簿記3級程度の知識でも経理業務ができてしまうということです。
簿記3級は、長くても1ヶ月程度の勉強で合格できるので、本気で経理をしようと思うのであればチャレンジしてみましょう。
自分で経理業務をするのは日々の取引、決算業務は税理士にお願いしよう
介護事業の経理をすべて自分で処理するのは時間的に限界があります。
そこで、自分で経理業務をするのは、『売上』『経費』『給与』など日々の取引だけに限定しましょう。
月に一回の月次処理や、年に一回の決算調整と申告書の作成は税理士にお願いしましょう。
経理を自分で処理することのメリット
起業したての介護事業の経営者にとって、一番の問題は『資金繰り』ではないでしょうか。
そこで、経理業務を自分で処理することで、税理士に対する外注費をかなり抑えることができます。
毎月3万円支払っていた顧問料を、経理を自分で処理することで半分にするだけで、年間18万円も節約できます。
また、経理を自分ですることで、お金の感覚がわかり、無駄な支出が見えるという効果もあります。
介護事業の経理に必要なもの
介護事業の経理に必要な物は、その介護事業所ごとに異なりますが、一般的には次のものが必要になります。
- 領収証
- 請求書
- 給与台帳(給与明細の控え)
- 国保連への報酬の請求データ
- 利用者負担分の請求データ
日々の資料を毎日整理するのは大変なので、経理処理の日にまとめて整理すると効率的です。(次段落で解説)
領収証と請求書は、『支払方法別』かつ『日付順』でノートに貼ると入力が簡単になります。
給与台帳と請求書は、それぞれポケットファイルなどにまとめておきましょう。
経理業務の日を決めておく
経理業務は時間が空いた時にするものではありません。
毎月やっている取り引きに合わせて、それぞれの経理業務を行うと処理が効率的になり、処理を忘れることもありません。
具体的には、次の日に処理すると効率的です。
- 売上の入金日・・・売上の計上処理 ※請求ミスと回収漏れもチェック
- 給与の支払日・・・給与の計上処理
- 現金払いの領収証・・・月末にまとめて処理
- 振込払いの請求書・・・振込日にまとめて処理 ※振り込み忘れをチェック
- その他(通帳からの引き落とし等)・・・月末にまとめて通帳から入力
毎月必ず行う処理に合わせて経理業務を行い、その他の取引は月末にまとめることで忘れることなく経理を終わらせることができます。
なお、自分で経理をする場合は、支払日に合わせて処理する『現金主義』のほうがミスが少なくなります。
発生日に合わせて処理する『発生主義』は、請求書や明細書から処理するため、『現金主義』に慣れたらチャレンジしてみましょう。
税務申告書は、『発生主義』で処理するため、慣れるまでは税理士にお願いしましょう。
介護事業者特有の売上の経理
『請求書』と『領収証の控え』は必ず保管
介護事業の売上には、幾つかの種類があります。
- 『国保連からの介護報酬』
- 『利用者からの自己負担分』
- 『介護用品の販売』など
本来売上は『発生主義』で計上しますが、慣れるまでは『現金主義』で処理し、発生主義への修正は税理士にお願いしましょう。
ただし、発生主義への修正には次の資料が必要なため、必ず正確に作成して保管しておきましょう。
- 国保連への請求書
- 利用者への請求書
- 利用者へ渡した領収証の控え※
※受領した金額が物品販売で5万円以上の場合は200円の印紙が必要
国保連への請求額と実際の入金額の差異
介護サービスに基づいて国保連に請求した介護報酬は、サービスをした月から2ヶ月遅れで入金されます。(これが資金繰りを悪化させる一つの要因)
この際、請求した金額と実際に入金された金額に差が生じることがあります。原因の主な理由は次の通りです。
- 端数処理の計算が介護事業所と国保連で異なる
- 請求方法にミスがあり、介護報酬が支払われない
- 上記のミスを訂正した再請求分が、毎月の介護報酬と一緒に支払われる
このような場合の経理処理は、入金時に請求額との差異を『売上値引き・戻り』などの勘定科目で売上高を修正します。
介護事業の経費の経理
介護事業の給与業務は大変
介護事業は3K(キツイ、汚い、給料が安い)と言われ、離職率が高い業界です。
また、給与計算には、『割増賃金』『就業規則』『交通費』『時給』『社会保険料』『所得税』『住民税』などがあり複雑です。
そのため、給与計算を経営者が管理するには限界があります。
そこで、人数が10人以上になり『就業規則』が必要になった時点で、思い切って社会保険労務士に外注するのも一つの手段です。
社会保険労務士に頼むことで、適切な雇用保険料を支払うことで、補助金の請求など別のメリットも生まれます。
経費の処理は現金主義からはじめよう
起業したての介護事業の経営者は、経理に慣れていません。
そこで、まずは経理に慣れるために、現金出納帳または預金出納帳からお金が出て行った時に経理処理する『現金主義』から始めましょう。
そこで、しっかりと現金残高と預金残高を合わせられるようにしましょう。
本来の『発生主義』への修正は、次の資料があればできます。慣れたらチャレンジしてみましょう。
- 銀行振込に使った請求書
- 現金で支払った費用の領収証
- 通帳から引き落とされた費用の明細書
- クレジットカードの明細書
介護事業の消費税は非課税収入がポイント
介護事業は一般の事業と異なり、課税収入と非課税収入があります。
具体的には、主に次のようなものが非課税収入になります。
- 国保連からの介護報酬
- 身体障害者用物品の譲渡
(義肢、盲人安全つえ、車いす、歩行器など)
『利用者の自費部分』や『身体障害者用物品に該当しないもの』は課税収入になり消費税が課税されます。
これらの判断は、起業したての介護事業者には難しいため、税理士などの専門家にお願いしましょう。
まとめ:介護の需要増加に反して介護事業者の廃業件数の増加する現状
起業したての介護事業者ための経理についてまとめました。
介護報酬改定もあり介護事業者の廃業件数が相当増えているという報道もあります。
今後の少子高齢化で介護の需要が増えるにもかかわらず、介護事業者が減ってしまう事態は大問題です。
特に小規模事業者には資金面でかなり困難な状況になります。
そのためには、経理も自分で出来ることは自分で処理して、外注費を節約すべきではないでしょうか?
デジタル機器の発展で、経理も効率化が進んでいます。
当会計事務所は介護事業者を応援しています。まずは当会計事務所にご相談ください。