美容院の開業時には、さまざまな費用が発生します。
オーナーとしては、1,000万円近いお金を使ったので、開業年度は相当の経費になると思う人もいるかもしれませんが、実際は違い、すぐに経費にできない支払いもあります。それが『固定資産』です。
そこで、美容院の開業1年目の固定資産そして減価償却についてまとめました。
固定資産は耐用年数の期間で費用化
税金の計算では、固定資産に該当するものは、購入した年に取得費の全額を経費とすることは出来ません。
これは、固定資産から生まれる効果は、その耐用年数にわたって及ぶと考えられるためです。
そのため、固定資産の購入費用は、その種類に応じた耐用年数にわたって経費としていきます。
つまり、お金が支払うのは開業の年でも、費用化できるのは購入してから5年から10数年必要となります。
固定資産の基準は『10万円』『20万円』『30万円』
固定資産に区分される基準は、その資産の種類ではなく、一台または一個ごとの支払金額が基準となります。
10万円未満または、使用可能期間が1年未満あれば、固定資産には区分されず、消耗品費として全額が支払った年の経費となります。
ハサミや衣装代も10万円未満であれば、固定資産ではなく消耗品費となります。
10万円以上20万円未満であれば、『少額減価償却資産』『一括償却資産』『固定資産』の3区分から選択することができます。
それぞれの区分には、一長一短があるため、税理士と相談しながら自分にとって有利方法を選びます。(詳細は記事後半を参照)
20万円以上30万円未満であれば、『少額減価償却資産』『固定資産』の2区分から選択することができます。
30万円以上であれば、文句なしの固定資産です。
[簡単解説]
● 一括償却資産・・・耐用年数に関係なく3年間で均等に償却する方法
● 少額減価償却資産・・・30万円未満の資産をその年に全額償却する方法
※合計300万万円が上限、かつ、青色申告が要件
固定資産の耐用年数
固定資産の耐用年数は、個人の恣意性を排除するために、法律で決まっています。(法定耐用年数)
美容院の開業時には、内装工事とカットチェアやバックシャンプーなどの設備を揃えますが、法定耐用年数は、次のようになります。
※平成28年4月現在の法令に従っています。
● 店舗内装工事・・・10年~建物の耐用年数
● 工具器具備品・・・5年 [耐用年数表>器具・備品>理容・美容機器]
● 一般自動車・・・4年~6年 [耐用年数表>車両・運搬具>自動車]
店舗内装工事は、賃貸物件に対する内部造作と考えられ、国税庁ホームページでは、耐用年数を『建物の耐用年数』『見積耐用年数』を原則とし、特例として『賃貸借期間』としているため、あいまいな表現となっています。
[参考ページ]
タックスアンサー№5406│国税庁ホームページ
開業までに支払った費用も固定資産(開業費)
これまで、金額で固定資産を判断すると書いてきましたが、例外があり、それが『開業費』です。
開業費とは、開業日の前日までに支払った固定資産以外の費用のことをいいます。
- 帳簿やパソコンソフト・ボールペンなど筆記用具
- 打合せの交通費・飲食代・土産代
- チラシ・名刺・挨拶状などの印刷代
- ホームページの作成費用
- 開業の参考にした書籍代
- などなど
これらの費用は、開業した年の経費とせず、繰延資産(固定資産の一種)として計上します。
償却期間は5年間ですが、任意償却が認められているため、経営が軌道に乗るまで償却せずに、黒字になってから償却することもできます。
※普通の固定資産は、強制償却のため、毎年決まった金額を減価償却費として計上しなければなりません。
固定資産を所有するだけで発生する償却資産税
固定資産には、もう一つ忘れてはいけない税金があります。それが『償却資産税』です。
償却資産税とは、土地建物以外の固定資産に課税される税金で、お店の所在地の地方自治体に納税します。
毎年1月1日時点に所有する資産の課税標準額が150万円を超えると課税され、6月頃に納税通知書が届きます。
先ほどの金額基準で出てくる有利判定がここで影響してきます。
● 一括償却資産を選択すると、償却資産税の申告書に記載しなくてもいい
● 少額減価償却資産を選択すると、償却資産税の申告書に記載しなければならない。
つまり、初年度に経費を多く計上できる『少額減価償却資産』を選択すると、償却資産税が課税される可能性が出てくるため、有利な方を選択する必要が出てくるのです。
[参考ページ]
引用│東京都主税局
まとめ:固定資産税の処理は開業時が一番大変
美容院開業時の固定資産の処理方法をまとめました。
ポイントとしては、次の2つになります。
- 何を固定資産に計上するか
- 固定資産をどうやって償却していくか
一度決めてしまえば、同じことの繰り返しなので2年目からは難しくありませんが、開業時は注意が必要になるのが固定資産の特徴です。