百田尚樹『錨を上げよ 上』を読みました。
上巻だけで591ページあります。上下巻の合計だと1200ページにもなる大長編です。
相当の覚悟を持たないと、挫折しそうですが、読み始めると、スイスイ読めるのが不思議です。
あらすじ&感想
作田又三という人の人生をを描いた作品です。
上巻では、大阪の下町で生まれたところから、大学の途中までが描かれています。
時代は終戦から10年を過ぎた頃からスタートします。
物語は、又三の目を通して、戦後の日本の人々の生活や、経済復興期の政治や事件などが描かれます。
また、その時代性や又三の性格から、又三とその周りの人々が起こす数多くの事件が描かれます。
又三の生活が順々に描かれますが、その中身は、又三の成長を描いた青春小説といえます。
しかし、悩みや葛藤のシーンでは少し哲学書のようであり、戦後からバブル期の時代背景や事件やニュースも細かく説明されるため歴史も学べます。
百田尚樹の作品は、『永遠の0』『海賊とよばれた男』『ボックス』『影法師』などいろいろ読んでいますが、ジャンルが違えど、読みやすく、センテンスが短く歯切れがいい感じはどれも共通しています。
戦後日本の『学生運動』『共産主義』『マルクス主義』などを知らない人にとっては、小説でその実態を学べる教材的な要素もあります。