百田尚樹の『錨を上げよ(下)』を読みました。
下巻だけで616ページ!上下巻合わせると1200ページを超える超大作です。
読んだ後の感想は『面白かった!そして読みきった!』という満足感です。上巻も面白いですが、下巻のほうが引きこまれました。
宮部みゆき、京極夏彦など1000ページを超える大長編を読んだ後に感じる満足感が、本作でも味わえます。
あらすじ&感想
上巻は作田又三の誕生から大学生までが描かれますが、下巻は大学から30歳を超えた頃までが描かれます。
1200ページを費やして一人の人生の半分も描かれていないので、どれだけ密度が濃いかがわかると思います。
内容を簡単に言うと、下巻の中心は青年になった又三が、さまざまな危険な仕事をしながら、多くの人と恋をするお話です。
出てくる女性は10人以上で、それぞれの女性との出会いや別れが、又三の視点を通して描かれます。
性格も生き様も違う女性達を通して、愛の本質について哲学的に問いかけてきます。頭がよく思慮深い脇役たちの哲学的で本質を付く言葉が又三の人生に影響を与えます。(本質的な部分は変わりませんが・・・)
難しい話にも思えますが、さまざまな事件が頻繁に起こり、ページをめくる手が止まりませんでした。あくまでもエンターテイメント小説です。
この作品は、百田尚樹の自伝的小説や私小説的な側面がありますが、基本的にフィクションです。
なぜなら、30年前後の人生で、これほど多くの経験をするのは不可能だからです。
しかし、百田尚樹が自身で経験したことや、実際の事件や時代背景に対する考え方が、色濃く反映されているのが伝わってきます。
かと言って政治的な意見が主張されているわけではありません。あくまでエンターテイメント小説として楽しめる作品でした。
映画化やドラマ化しても、この作品の良さは伝わらないと思います。あくまで読み物としての楽しい作品だと思います。