美容室の開業には、オープン日までにさまざまな費用が発生します。物件の契約から始まり、内装工事、備品の購入などさまざまです。
個人事業主の確定申告では、オープンまでの準備費用の一部を開業費として計上できます。この開業費の範囲は、自分が思うよりも広く、自分がダメだと思っても含められる可能性があります。
そこで、これから開業する美容師のために、個人事業主の開業費についてまとめてみました。
美容院の開業費となるもの・ならないもの
開業費とは、事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいいます。ただし、 資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除きます。(国税庁HPより)
美容院の開業の場合、開業日までに支払った費用を開業費として計上することができます。
ただし、法律で開業前の具体的期間や具体例を細かく例示しているわけではないので、開業準備として説明できれば、範囲は意外と広くなります。
- 店舗の権利金(礼金) ※敷金は原則返却されるので計上できない
- 店舗備品や事務用品の購入費
- 従業員の給与や研修代、夜食代
- 開業コンサルタントへの報酬
- 開業前の電話代やネット代
- 開業前の電気代などの水道光熱費
- 内装業者やコンサルタントとの打ち合わせ費用(交通費、土産代、喫茶代)
- ホームページやチラシ、名刺などの広告宣伝代
- 借入金の利子等 ※資産取得のための利子は取得費に含める
なお、店舗の損害保険料など数年分を前払いするものは、前払費用に該当するため計上できません。
また、内装工事費やシャンプーチェアなど高額なものは資産計上するため、開業費ではなく減価償却費となります。
開業費の償却
開業費の償却期間は、原則として5年間(60ヶ月)で按分して費用にしていきます。
開業費×12ヶ月(開業1年目は数ヶ月)/60ヶ月
しかし、任意償却も認めらているため、自分の好きな年分に、好きな分だけ償却することもできます。これは5年を経過した後でも構いません。
任意償却が認められているため、開業1年目は赤字で所得がない場合は開業費を償却せず、2年目以降の黒字となった年分で償却することで、所得税を節税することができます。
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開業費と消費税
個人事業主として美容院を開業した場合、原則として2年間は消費税を納める義務を免除されます。(詳しくはこちら)
そのため、内装工事費や開業費として、消費税を多く払ったとしても控除することはできません。
消費税を控除して還付を受けるためには、消費税の課税事業者になる届け出をしなければなりません。
なお、課税事業者になると2年目も課税事業者になるため、注意が必要です。
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開業費と減価償却
内装工事や固定資産など資産の取得費用は、開業費にならないのは先述のとおりですが、取得費用でも経費にすることができるものがあります。
それが『少額減価償却資産』です。青色申告の届け出をしている事業者は、30万円未満の資産なら購入した年度の経費にすることができます。(詳しくはこちら)
まとめ:オープンまで記録をしっかり残そう
美容院の開業費となる支出についてまとめました。
細かい要件はなく、開業準備のために支払った費用という曖昧な表現のため、明快な説明さえできれば、細かい領収証も含めることができます。
領収証や請求症などの書類は捨てずに保管し、電車代など領収証がないものは出金伝票を記載して保管しておきましょう。
開業時の経理の仕方でも税金は大きく変わってきます。お困りの際は、是非弊所にご相談ください。