自宅で美容室を開業するメリットとして、『通勤時間なし』『敷金・礼金・家賃なし』『子育て育児と両立』など通常の開業と異なるメリットがあり、これを活かして費用を抑えた自宅開業を目指す人もいると思います。
しかし自宅で開業すると、支出の内容が事業に関するものか、生活費に関するものかの区別をはっきりさせなければなりません。
この区別をはっきりさせることで、正しい確定申告をすることができます。また、事業割合を明確にすることで、事業と生活に共通する支出も経費とすることができ節税につながります。
そこで、自宅で美容室の開業を目指す美容師のために、店舗併用住宅の確定申告のポイントをまとめました。
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店舗併用住宅の住宅ローン控除の計算
住宅ローン控除とは、正式には住宅借入金等特別控除といいます。タイトルが長いため一般的には住宅ローン控除と呼ばれています。
所得税の計算上、所得税から控除できる税額控除のひとつです。
計算方法をざっくり言うと、住宅ローンの年末残高の1%を税金から控除できます。サラリーマンの給与からは源泉所得税が毎月天引きされているため、住宅ローン控除を使うことで、天引きされすぎた税金が還付されることになります。
[参考ページ]
タックスアンサー№1213│国税庁ホームページ
店舗併用住宅の住宅ローン控除
自宅の一部を美容室にしているような家屋を『店舗併用住宅』といいます。
店舗併用住宅を新築した場合でも、銀行の住宅ローンを契約することはできますが、確定申告で住宅ローン控除を利用できるのは、居住用部分に限られます。※店舗部分は対象外
そのため、住宅ローン控除の計算では、住宅ローンの年末残高に居住割合を乗じた金額で計算することになります。
[参考ページ]
質疑応答事例│国税庁ホームページ
事業割合と居住割合
店舗併用住宅の住宅ローン控除の計算で使う『居住割合』とは、自宅の床面積のうち居住用に使用する床面積の割合になります。なお、トイレや廊下など共有部分は、按分計算で居住用部分を計算します。具体的には下記のように計算します。
- 20㎡ 事業用の床面積(事務所など)
- 60㎡ 居住用の床面積(寝室、キッチンなど)
- 4㎡ 併用部分の床面積(トイレ、廊下など)
居住用部分 → 63㎡・・・60㎡+4㎡×60㎡/(20㎡+60㎡)
居住割合 → 75%・・・63㎡/84㎡
居住割合が計算できると、その反対は事業割合になります。上記の例だと25%(1ー75%)が事業割合となります。
ただし、事業割合 が50%以上の場合は、住宅ローン控除を受けられないため注意が必要です。また、事業割合 が10%以下だと住宅ローン控除の計算上、100%居住用として取り扱われます。
居住割合(事業割合)の計算には、建築図面や工事の明細書が必要となるため、捨てずに保管しておきましょう。
事業割合で経費にできるもの
自宅に対して支出するものについては、事業割合を乗じることで、事業用となり費用とすることができます。。具体的には次のようなものが考えられます。
- 住宅ローンの利息部分
- 建築費のうち美容室部分(減価償却資産)
- 固定資産税
- 損害保険料、火災保険料 ※居住用部分は所得控除の対象となりうる
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まとめ:生活と事業の区別がポイント
自宅で美容室を開業した場合の、確定申告のポイントを紹介しました。重要なのは『事業割合と居住割合』を計算にすることです。
この割合を明確にすることで、共通する支出についても事業用部分を計算でき、経費として計上することができます。
事業割合は開業時に算定し、その後何十年と使用する割合となるため、開業時にしっかりと計算しておくことが重要です。