所得税は所得を得た人が、所得金額に対する税金を自分で計算して納付する『申告納税』が原則です。
しかし、給与に課税される所得税については、給与を支払う店主や会社が、あらかじめ給料から天引きして、それを店主や会社が本人に代わって納税します。これを『源泉徴収』といいます。
小さな美容室など個人事業主でも、2人3人のスタッフを雇い、給与を支払っている場合は、オーナーは源泉徴収の義務があります。
税金計算や給与計算というと難しく感じるかもしれませんが、コツを掴むと誰でも簡単にできます。そこで、自分で給与計算をする個人事業主のために、源泉所得税の計算方法を紹介します。
課税されるのは社会保険料と雇用保険料を控除した残額
所得税が課税されるのは、給与総額ではなく社会保険料と雇用保険料を控除した残額となります。
課税対象 = 給与の総支給額 ー 社会保険料 ー 雇用保険料
給与総額には、残業手当や家族手当などの手当を含めた金額ですが、通勤手当※は非課税のため含めません。
※ 改正により、平成28年1月以後に支給される給与から、非課税限度額が15万円になりました。(改正前は10万円)
扶養親族の数は年末調整の資料で確認
源泉所得税は、従業員の扶養親族が多いほど少なくなります。
扶養親族とは、生計を一にしている『配偶者』と『6親等内の血族』、『3親等内の姻族』で、所得が38万円以下(給与だけなら給与収入が103万円以下)の親族です。ただし、16歳未満の親族は対象外となるので、注意が必要です。
スタッフの扶養親族は、年末調整で従業員に提出してもらった『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』(下記図参照)から確認できます。
この申告書を提出しているスタッフは、源泉徴収税額表の『甲欄』で税額を計算しますが、提出していないスタッフは『乙欄』で税額を計算します。
源泉徴収税額表から天引きする税金を探す
源泉徴収する税額は、その年分の源泉徴収税額表(月額表)から探します。
[参考ページ]
引用│国税庁ホームページ
まず、課税対象となる給与の行を探します。(参照:図①)
次に、スタッフの扶養親族の数まで、その行のなかでスライドした場所の金額が源泉徴収する税額となります。(参照:図②)
なお、年末調整で『給与所得者の扶養控除等申告書』を提出していないスタッフは、扶養親族の数にかかわらず『乙欄』(参照:図③)の税額となります。
源泉所得税の勘定科目と仕訳
会計ソフトに給与の支払いを入力する場合、使用する勘定科目は『預り金』を使います。預り金勘定は、源泉所得税の他にも社会保険料や住民税でも使うことがあるため、補助科目を設定しておくと便利です。
なお、仕訳の方法は『なるほど!給与や報酬で源泉所得税を天引きしたときの2つの仕訳方法』の記事を参考にしてみてください。
納付は翌月10日が原則だけど、届出で年2回納付も可能
店主が源泉徴収した税額は、徴収した月の翌月10日までに、納付書を自分で書いて銀行や郵便局で納付します。
納付書は、年末に税務署から郵送される年末調整のお知らせに同封されていますが、税務署の受付窓口でもらうこともできます。
なお、納期の特例として、従業員が常時10人未満であれば、あらかじめ税務署に『納期の特例の届出書』を提出することで年2回にまとめて納付することができます。※納期の特例の納付期限は、1月から6月分は7月10日、7月から12月分は翌年1月20日
[参考ページ]
引用│国税庁ホームページ
源泉所得税の納付書の書き方
源泉所得税の納付書の書き方は下記のとおりです。毎月納付と年2回納付で納付書の種類が異なるので注意しましょう。
また、納付書には給与だけでなく、外部の個人へ支払った顧問料や講演料、原稿料やデザイン料で源泉徴収の対象となり、報酬から天引きした源泉所得税も記載して納付します。
まとめ:コツを掴めば自分でできる給与計算
給与から天引きする源泉所得税の計算方法と納付方法をまとめました。
従業員が2、3人で、オーナー自身が給与計算をする美容室もあります。オーナー美容師さんはこの記事を見ながら給与計算してみてください。
また、毎月納付している方は、経理の効率化のために、年2回納付への変更を検討してみましょう。