西加奈子『ごはんぐるり』を読みました。
ごはんをテーマにしたエッセイ集で、NHKのきょうの料理に掲載されていたものをまとめたものです。本の最後には書き下ろしの短編小説も乗っているのでお得感があります。
同氏の作品は小説ばかり読んでいて、エッセイは初めて読みましたが、小説と同様に、言葉の選び方が魅力的で楽しくて笑える作品です。
また、表紙のかわいい装画は、西加奈子さん自身で描かれています。
あらすじと感想
32話のエッセイと1つの書き下ろし『奴』で構成されています。
ごはんがテーマになっていて、筆者の背景や考え方が食事を通して書かれていて、日本人ならあるあると頷いてしまう話もたくさんあり、楽しくて笑えます。
筆者の生まれはイランで、エジプトと大阪で育ったという変わった経歴です。それが『生!なま!』や『カイロの卵かけごはん』で紹介されています。これを読むと、おもしろい反面、日本がいかに恵まれていて、自分がいかに贅沢をしているか再認識できます。
また、外国人によるお国の家庭料理の作り方を体験したお話も、西加奈子さんの独自の目線で描かれていて、ハッとさせられる思いがします。
『お洒落って何』では、『おしゃれ』という言葉がないスウェーデン人のお母さんが作ってくれる料理が、意図せずめっちゃおしゃれという皮肉を、大阪人丸出しのツッコミが楽しくて笑えます。
オシャレを意識しすぎて変になっている日本人と、生活で気持ち良いものが自然とおしゃれになっているスウェーデン人との違いが分かります。
数あるエッセイのなかで特に好きなお話が『活字のごはん』です。料理本に出てくる言葉が、実際の料理よりも生々しくイキイキしていることが書かれていて。なるほどなと思いました。『青々としたほうれん草のおひたし』など想像することで味わう活字の料理が魅力的に書かれています。
どのエッセイも5分もあれば読めるので、旅行中に読むにはもってこいのオススメの一冊です。