美容室の経営者さん。3月15日の確定申告の準備は順調でしょうか?それとも焦っているのでしょうか??^^;
毎年の確定申告は、オーナーさんにとって大きなイベントですし、開業1年目の美容師さんならなおさらです。
確定申告書の作成には、まず、決算書で店舗の所得(事業所得)を計算します。
決算書の作成には『売上の集計』『領収証の整理』『請求書の整理』『棚卸資産の計上』『減価償却費の計算』などの処理が必要です。
さらに、開業1年目だと『届出書の提出』『減価償却資産の登録』『開業費の計上』など1年目特有の処理も必要となります。
そこで、個人事業主の美容師さんのために、会計ソフトまたは確定申告書作成ソフトに入力する直前の段階までの、効率を上げる確定申告の準備についてまとめました。
3月に向けて確定申告書の準備をする美容師さんは、参考にしてみてください。
※この記事は、平成28年分の法令に基づいています。あらかじめご了承ください。
決算書作成の流れ
事業所得を計算するためには、大きく分けると次の4つの流れとなります。
- 売上データの集計
- 領収証・請求書の整理
- 棚卸資産の集計
- 減価償却費の計算
これらのステップを準備段階で整理しておくと、会計ソフトへ入力するにしても、合計額を決算書へ転記するにしても格段に効率が上がります。
なお、開業時に青色申告承認申請書を提出していると、事業所得から最高で10万円または65万円を控除できます。(青色申告特別控除といいます。)
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青色申告で65万円の控除するには
青色申告承認申請書を提出(提出期限があるので注意が必要です)すると、決算書の事業所得から最高で10万円または65万円を控除できます。控除額の違いは、複式簿記を使って帳簿付けているかによって異なります。
会計ソフトを使って複式簿記で帳簿を付けると、所得金額を限度として65万円を控除できます。ただし、決算書に12月31日時点の貸借対照表を添付しなければなりません。(貸借対照表とは、資産と負債の残高を記載した表をいいます。)
[参考ページ]
タックスアンサー№2072│国税庁ホームページ
POSレジで売上データの集計
美容室の売上は、9割以上が現金売上で、残りがクレジットカード売上やポイント売上となっている店舗がほとんどです。
最近では、顧客カルテや顧客管理アプリを使う店舗が増えましたが、これらのアプリの多くはレジ機能も搭載しています。このようなPOSレジを導入することで売上データの集計が簡単になります。
POSレジを導入してれば、月ごとの売上を一覧形式で出力できますし、CSVファイルとして出力して会計ソフトへインポートできる機能もあるかもしれません。
なお、POSレジを導入していない美容室は、ノートやレシートで毎日記録している売上帳から集計することになります。
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消費税の簡易課税
消費税の簡易課税を選択している美容室は、売上を事業区分ごとに分類しないと正確な消費税が計算できません。
一般的な店舗を具体例にすると、店販売上を第2種(小売業)に、技術売上を第5種(サービス業)に区分します。(美容室の消費税については『3分でわかる美容室の消費税の納税義務と簡易課税の基本』を参照)
[参考ページ]
タックスアンサー№6509│国税庁ホームページ
請求書・領収証の整理は日付順にしない
請求書の整理
美容室の商品仕入やポータルサイトへの広告料など毎月発生する経費は、請求書が発行され翌月末までに振り込んで支払っていると思います。
このように預金口座を通じて支払う経費は、『支払先ごと』に整理してクリップで留めておくと、会計ソフトへ入力する際に、買掛金や未払金の入力が簡単になります。
日付順で整理すると、複数の支払先が混ざるため、入力作業の効率が下がります。
なお、会計ソフトへの入力は、発生ベースが原則となるため、12月分の請求書は、翌年1月末に支払ったとしても12月分の経費となります。
領収証の整理
領収証の整理のコツは、『勘定科目ごと』かつ『支払先ごと』に整理すると、会計ソフトへの入力でも、単純な集計でもスピードが上がります。『日付順』に整理すると入力も集計も大変になります。
まず、勘定科目ごとに仕分けし、そのなかで支払先ごとに仕分けすると、誰でも簡単に整理できます。
なお、美容室の経理でよく使う勘定科目は『【保存版】美容室の経理でよく使う23の勘定科目まとめ』を参照してみましょう。
12月31日をまたぐ収益と経費
決算特有の処理として、12月31日(年末)をまたぐ収益と経費を集計します。決算書は原則として発生主義で計算するため、収益や経費は発生した時点で認識することになります。
具体的には、売上に関しては12月中にクレジットカードで売り上げ、翌年の1月に入金されるものでも、12月分の収益として認識します。
経費も同じで、12月分の経費を翌年1月に振り込んだとしても、12月分の経費として認識します。
作業としては、翌年1月以降の通帳をチェックしたり、12月分の請求書から確認できます。
自動引落の活用で現金を使わない
確定申告の効率を上げるためには、現金取引を減らし、預金通帳の取引を増やすことで、預金通帳に記録を残しておくことです。
現金出納帳はミスなく記録するのは大変ですが、預金通帳を通して支払うと、ATMで記帳するだけで預金通帳が簡易的な帳簿になりますし、何よりミスがありません。
具体的には、電気代や水道代などの水道光熱費や、電話代やインターネット代などの通信費は、自動引落を利用することで現金勘定を使わずに済みます。
また、会計ソフトへ入力する場合も、毎月の決まった仕訳を、摘要登録や仕訳登録をすることで、入力効率が格段に上がります。
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固定資産は国税庁HPで管理
減価償却費の計算は、これまで固定資産台帳や会計ソフトで管理していましたが、最近では国税庁ホームページの確定申告書作成コーナーで管理できるようになりました。しかも無料!
固定資産を購入した年に、『取得価額』『償却方法』『耐用年数』『取得年月日』を登録することで簡単に減価償却費を計算できます。
しかも翌年以降は前年のデータを繰り越して更新すると、減価償却費も自動的に計算できます。
日頃から固定資産を購入したときに登録しておくことで、年末に慌てることが減ります。
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棚卸資産の集計は年末の大掃除と同時並行
棚卸資産とは、仕入商品のうち年末時点で在庫として残っているものをいいます。商品の仕入として計上した経費から、棚卸資産を除くことで、その年の正確な売上原価を計算します。
棚卸資産の集計は12月31日時点の在庫で計算するため、年末の大掃除と同時並行で進めると効率が上がります。
大掃除をしながら在庫商品の数量を集計しておけば、決算時に仕入単価を乗じることで棚卸資産を簡単に計算できます。提出期限の直前に思い出しながら集計するよりも簡単です。
まとめ:誰でもできる確定申告書の作成
オーナー美容師さんのために、確定申告の効率を上げるための準備の方法についてまとめてみました。
準備さえ整ってしまえば、会計ソフトへの入力もそれほど時間をかからないので、提出期限が迫っても焦らずに処理できます。
それでも迷ってしまった方は、確定申告前の1月から2月頃に開催している税理士会や税務署・青色申告会の無料相談会も上手に活用しましょう。