伊坂幸太郎の火星に住むつもりかい?を読みました。
タイトルからイメージすると『ガソリン生活』のようなファンタジー小説かSF小説かと思うかもしれませんが、内容は架空の街で起きる社会派小説で結構重いです。
ですが、著者独特の言い回しやキャラクターが登場するので、楽しく読めました。勉強にもなるのでオススメです。
あらすじ&感想
平和警察という組織がつくられる。そこでは未然に犯罪を防ぐという目的で、犯罪の可能性のある人物が取り調べを受ける。
街の至る所に監視カメラが設置され、住民からの密告・チクリも重要な証言となるため、住民同士が疑心暗鬼に陥る。
また取り調べとは名ばかりで、実際にはシロでもクロと言いたくなるような拷問を受け、最終的には公衆の面前でギロチンで処刑される世界。
そんな生きづらい世界でもルールがあるなら従って生きるしかない。それが嫌なら火星にでも住むのかい?
そんな平和警察が支配する世界に、黒ずくめの正義の味方が登場する。しかしその正体は・・・
読んでみるとわかりますが、毎月のように世界のどこかでテロが起きる現代で、トランプさんのようにテロを未然に防ぐという目的で、一部の国民を抑圧しようとする現実の世界に通じるものがあります。
互いに監視しあって、誰かを排除しようとする政策は、テロを減らせるかもしれませんが、仲良しだった隣近所の人も信用できなくなり、生きづらい世界になります。そして監視が強化され抑圧されると新しい反発が生まれることになることが描かれています。
テーマは思いですが、実際の登場人物は、理髪店の主人と奥さん、虫が大好きな警察官、変わった宣伝方法が大好きなせんべい屋の社長など身近な人物で、かわされる会話はユニークで重さを感じません。是非読んでみてください。
ちなみに、表紙に書かれている『Life on mars ?』はミュージシャンのDavid Bowieの曲のタイトルから引用されているようです。
また、カバー印刷が萩原印刷という偶然!印象的な本でした。
名言&格言&名セリフ
・ウソ発見器の悲劇 ※90%の発見率の場合、残り10%が冤罪という事実
・弱肉強食とはいっても、動物たちは勝ったり負けたり(真壁)
・害虫・・・ようするに人間にとって、邪魔かどうかはかなり、恣意的だってことだよ・・・虫たちに悪気はない・・・(真壁)
・偽善だ偽善だと叫ぶ人は、単に『良さそうなこと』をやっている人が鬱陶しいだけなんじゃないか
・世の中が正しい状態になるわけじゃない・・・振り子が行ったり来たりするように、いつだって前の時代の反動が起きて、あっちへ行ったり、こっちへ来たりを繰り返すだけだよ(真壁)