2016年10月に2015年の国勢調査の結果が公表され、そこで総人口がはじめて減少に転じたことがわかりました。
以前から人口増加のピークが近づいていること、ピークを境に減少に転じることが予想されていましたが、それが現実のものとなりました。
この人口減少は、慢性的な人手不足が問題になっている会計業界にも大きな影響があります。
そこで、人手不足がもたらす10年後の会計業界を勝手に予想してみました。
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会計事務所の人手不足の背景
会計事務所や税理士事務所の人手 不足は慢性的な問題で、常に求人案内を出している状態です。しかもこれは、今に始まったことではありません。
ではなぜ、人手不足になっているかと言えば、その背景には、次の3つの理由があると思います。
1.従業員の出入りが多い
会計事務所の従業員は、大企業に限らず中小企業を含めた一般的な企業に比べて、入社と退社が比較的多い業界です。
それは、パートやアルバイトで働く主婦が、出たり入ったりするだけでなく、正社員の従業員でも入社して1年しないうちに退社することがあります。
主婦の方は、子どもの病気や行事・夫の転勤等が背景にありますが、男性の正社員の場合は、入社前のイメージと入社後のイメージのギャップに耐えられずにやめることが背景にあります。
2.労働環境が良くない
税理士には、個人事業の税理士事務所と税理士法人があり、最近は税理士法人が増えてきましたが、それでもまだ個人の会計事務所の方が多いのが現状です。
個人の会計事務所は、親方の税理士先生とその家族と従業員という構成が多く、なかなか一般企業のような労働環境が整備されていません。
家族経営の会計事務所に、入社する正社員やパートは、仕事ができることに加えて、その環境に溶け込むコミュニケーション能力が問われます。
事務職は甘く見られがちですが、コミュニケーション能力の必要な職業なのです。
3.仕事が複雑で多い
会計事務所の仕事は、記帳代行と申告書の作成が基本ですが、毎月顧問先に行き資料を集め、会計データを入力し、試算表やキャッシュフロー計算書を報告する作業を、決まった営業日以内で終わらせることは、担当先が増えてくると意外と大変な作業です。
また、この他に、給与計算や労働関係の書類も作成していると、1ヶ月のスケジュールはすぐに埋まります。会計業界がブラックと呼ばれる所以です。
最近では、ネット取引が多く消費税の課税判定も複雑になり、マイナンバー制度の開始で年末調整等の事務作業も効率が悪くなります。
このような仕事を、正社員だけでなく、パートで働く主婦にも強いると、どうしても頭がパンクする人が出てきます。正社員でも税理士資格がないと、研修を受けられずに改正についていけない人が出てきます。
10年後の会計事務所の未来│暗いバージョン
まず考えられるのは、小さい会計事務所では、求人情報を出しても人が集まらないことです。人が集まらないと、一人あたりの業務量が増え、いずれ業務が回らないことになります。
会計事務所の業務は上述のとおり、記帳代行・申告書の作成・給与計算などがあるため、結果として顧問先の業務が滞る可能性が出てきます。
顧問先に損害を出すことになると、会計事務所の信用問題となり、顧問契約の解除となります。
顧問契約の解除が続くと、当然ですが、体力のない小さい家族経営の会計事務所は廃業となる可能性が出てきます。
これが、人口減少の影響で人手不足となった10年後の会計事務所の未来のうち、暗いバージョンです。
10年後の会計事務所の未来│明るいバージョン
悪い予想とは別の、明るいバージョンの未来は、次のようなストーリーです。
人口減少と並行してITの進化も進みます。最近ではIOTと言って、あらゆるデバイスがネットワークとつながります。
現金通貨は使わなくなり、電子決済が進むことで、物買ったり売ったりしたデータがネットワークを通じて、会計データとして連動します。
その結果、今までパートや正社員が行っていたデータ入力作業がなくなり、税理士による申告書の作成業務だけになるかもしれません。
また、給与計算についても、スマホで労働時間を管理できるようになるため、そのデータがネットと連動することで、自動で給与計算できるようになります。(既にアプリでできますし)
これが、人口減少で人手不足になっても、会計業界のサービスが低下しないもう一つの未来です。
もちろん、サービスの維持の反面、IOTによって人間の仕事が奪われるというマイナス面もあり、それが、10年後に会計業務自体が消えてしまう職業と言われる理由です。
まとめ:IOTを活用できるかどうか
人口減少で人手不足に陥った会計事務所の、10年後の未来を2パターン予想してみました。
暗い未来となるか明るい未来となるかはわかりませんが、IOTなどのテクノロジーを使う側になると明るい未来になるのかな。と思いました。
ですが、自分としては、情に厚い税理士でありたいし、人と人のつながりを感じれるような仕事がしたいなと思ってしまいます。時代が許すなら。