黒川博行『国境』を読みました。
暴力団組員の桑原と建設コンサルタントの二宮が、活躍する疫病神シリーズです。
本作は、所属する組の幹部が詐欺に合い、その詐欺師を追って北朝鮮まで追いかけるサスペンスです。
800ページを超える超大作ですが、テンポが早く、関西弁の会話が漫才のようで気持ちよく、あっと言う間に読めてしまいます。
本作は人気シリーズの一冊で、『疫病神』『国境』『暗礁』『螻蛄』『破門』があります。破門は直木賞を受賞していますし、テレビドラマ化されたり映画化されたものもあり、どれも面白くオススメの一冊です。
あらすじ&感想
趙成根(チョウソングン)は、北朝鮮のカジノ建設への出資を語り、複数の暴力団やパチンコ店から、10億円を騙し取り北朝鮮へと逃げた。
二蝶会の桑原は、趙を見つけ出すよう幹部から命令を受ける。一方、趙に重機の購入先を紹介した二宮は、その重機が騙し取られたことを理由にフロント企業の裏にいる暴力団から追い込みをかけられる。
目的が重なった二人は、観光客に紛れて平壌へ飛ぶ。しかし、そこには観光ガイドという名の監視員と、自由行動が許されない観光スケジュールで趙を見つけ出すのに困難を極める。
何とか監視の目をかいくぐりなんとか趙を見つけ出すが、あと一歩のところで趙に逃げられてしまう。
桑原と二宮は一時帰国し、再度北朝鮮へと入国するが、今度は中国から非正規ルートで入国する。
山を超えて北朝鮮の地方へ入国した二人は、平壌とは全く違う北朝鮮のひどい状態を知ることになる。はたして趙を見つけることができるのか。騙し取られた金は回収できるのか。
本作は、ストーリーのテンポの速さと桑原と二宮の関西弁の会話が最大の魅力ですが、その背景にある社会問題を正確に切り取っている点も魅力の一つです。
北朝鮮の階級制度が細かく決められており、バッチを見ると階級が一目瞭然であること、階級が比較的高い軍部の中でも貧困が進んでいて賄賂での買収が常態化していることが詳しく描かれています。
巻末に参考資料リストが数十冊も載っていることからも、この小説が実際の北朝鮮の事情を描いていることがわかります。
小説としても面白く、現在の北朝鮮事情を知る作品としても参考になる作品です。