確定申告の医療費控除を知っている人は多くいると思います。10万円(実際には5%基準もあるけど)を越えると、超えた分の医療費が所得金額から控除できる制度です。
その医療費控除ですが、2017年から追加で新しい制度が生まれました。それがセルフメディケーション税制(OTC医療費控除)です。
セルフメディケーション税制を利用することで、これまで医療費の合計が10万円を超えずに所得控除ができなかった人でも、所得控除を受けられる可能性があります。
そこで、はじめて確定申告する人の為に、セルフメディケーション税制をわかりやすく解説します。
医療費控除で所得税が減る仕組み
そもそも医療費控除をすると、なぜ所得税が減るか、その仕組を知っているでしょうか?そこで、所得税の計算方法をわかりやすく紹介します。難しい計算は省きますので、詳しく聞きたい方は税理士や税務署に相談しましょう。
所得税の計算は3段階
ひとつ目は、所得金額の計算です。サラリーマンなら給与から給与所得控除を差し引いたあとの金額ですし、事業をしている人なら売上から経費を差し引いた後の利益の金額です。
ふたつ目は、所得控除です。所得控除には14種類あり、医療費控除もこの中の一つです。この他には、ふるさと納税で有名な寄付金控除、年金や健康保険料などの社会保険料控除、配偶者控除や扶養控除などがあります。
ひとつ目で計算した所得金額から所得控除の金額を差し引いた残額に税率※を乗じると税金が出ます。
ここで、所得金額よりも所得控除のほうが大きいときは、税金が出ません。
※所得税の税率は、所得金額が大きくなるほど税率も上がる超過累進税率
最後の三つ目は、税額控除です。最も有名なのが住宅ローン控除で、ふたつ目で計算した税額から税額控除を差し引いた残額が納付する税額となります。
ただし、お給料や報酬から源泉徴収されているときや、所得税を予定納税しているときは、その金額も控除して納付します。
ここで、源泉徴収や予定納税している金額の方が大きいときは、払いすぎた部分が還付されます。
セルフメディケーション税制の概要
制度の背景
これまでの医療費控除が、病気やケガの治療に対して支払った医療費に対して税金を免除しようという背景でしたが、セルフメディケーション税制は健康の維持管理や、軽度の体調不良のために支払った医療費も所得税を軽減しようという背景があります。
人口の半分が高齢者となる超高齢化社会で、日本の医療費が高騰しているために、医療費の抑制として自分自身で健康管理してもらおうという国の方針が考えられます。
控除の対象となる薬
控除対象となる医薬品は、薬局やドラッグストアで購入できる市販薬で、カウンター越しに販売するという意味でOTC医薬品(オーバー・ザ・カウンター)と呼ばれます。
OTC医薬費に分類されるものは、特定の有効成分が含まれるものですが、専門家でない限り判断できません。そこで、薬のパッケージに下記のOTC医薬品のマークが付いています。(実際には見たことはありませんが、徐々に増えていくことが予想されます。)
また、領収証にもOTC医薬品であることの目印が付くことが予想されます。
所得控除される金額の計算
はじめに、自分と同一生計の家族のOTC医薬品の領収証を集計します。
次に、集計した合計額から、『1万2千円』を控除した金額が所得控除の金額です。
ただし、計算した金額が8万8千円を超えるときは、8万8千円が上限となります。
OTC医薬品の判断ができれば、計算はとても簡単なので、専門家に頼らずに自分で計算できます。
確定申告の方法
所得控除を利用して還付を受けるためには、確定申告をしなければなりません。そして確定申告の方法はいくつかあります。
- 税理士に依頼する
- 税務署の確定申告書の作成会場で自分で作成する
- パソコンのe-taxを使って自分で作成する(書面提出と電子送信のどちらでも可能)
- 青色申告会で作成する
- 市役所で開催されている相談会場で作成する
確定申告書を作成するには、上記のような方法があり、それぞれメリットとデメリットがあります。
税理士に依頼すると、資料を渡すだけで作成提出してくれますが、報酬を支払います。
税務署や市役所で作成すると無料ですが、マンツーマンで対応してもらえないため時間がかかりますし、イライラします。
パソコンで作成するには、OSが対応していないケースもありますし、操作が苦手な人もいます。
青色申告会で作成できる人は、小規模事業者で会員になっている人に限られます。
まとめ:領収証は捨てずに保管
2017年1月から始まるセルフメディケーション税制について、おおまかにわかりやすく説明しました。思っていたよりも簡単なので、知っていれば自分で計算できると思ったのではないでしょうか?
これまで健康で、医療費も10万円に届かなかったので医療費控除をしたことがなかった人でも、医療費控除を受けられるかもしれません。
チャレンジしてみてはいかがでしょうか。