開業した美容室が軌道に乗るまでに、平均して半年から1年ほど必要と言われています。それまでにどうやって集客するかは開業したオーナーにとって一番の悩みではないでしょうか?
集客方法には、口コミやホームページ・SNS・チラシ広告などがありますが、現在最も利用されている広告ツールがホットペッパービューティーです。
というか。ここ10年ほどサロン系の予約サイトではほぼ独占状態のため、ホットペッパービューティーに頼らないと集客できない依存状態になっています。しかし掲載料の高さがオーナーには大きな悩みのタネになっています。
そこで、これから開業する美容師さんのために、美容室を開業して経営する上でのホットペッパービューティーの影響力と経営上の問題点を紹介します。
ホットペッパービューティーが強い理由
芸能人を使ったCMがバンバン流れているので、知らない人がいないくらい認知度は高いですが、基本的な概略を説明すると、ホットペッパービューティーとは、美容室やネイルなどサロンの情報が掲載されている予約サイトのことで、株式会社リクルートホールディングスが運営しています。
消費者は、地域ごとのサロンがひと目でわかり、気になるサロンを見つけるとウェブ上から予約状況を確認して、空いていれば予約を入れることができます。
サロン側は、予約サイトからの集客が見込めるため、掲載料を毎月支払ってサイトに情報を載せてもらいます。
ホットペッパービューティーのスゴイところは、何より情報量が多いことです。サロン系の予約サイトだとほぼ独占状態で、美容室の経営者は選択の余地がほとんどありません。
美容室を探す消費者からしても、選べる美容室の選択肢が多く、さらに口コミやキャンペーン情報など最新情報が掲載されているため、他のサイトよりも便利ということになります。
ホットペッパービューティーのSEO対策が半端ない!
googleで『地域名 美容室』と検索すると1ページ目がほぼホットペッパービューティーで埋まってしまいます。
このように検索ページの上位を独占する方法をSEO対策と言います。
一般的に検索する人の90%以上は1ページ目で検索に対する答えを見つけるため、2ページ目に進む割合は極端に下がります。
つまり、他の掲載料の安い予約サイトに登録したり、独自のホームページで予約システムを構築しても、見られる可能性が低く無駄になる可能性があります。
このSEO対策は、リクルートが違法なことをしているわけではなく、単純にgoogleから有益なコンテンツが掲載されている優れたサイトとして認識されているからです。なぜ有益なサイトとして認識されるかと言えば、簡単に言うと次のような仕組みが考えられます。
『情報量で圧倒する』➞『広告で注目を集める』➞『サイトのアクセス数が上がる』➞『美容室の掲載数が増える』➞『登録料で儲かる』➞『さらに広告で注目集める』➞『消費者を集める』➞『美容室の掲載数が増える』
このような良い循環が生まれることで、サイトが育ち独占状態が生まれます。良いか悪いかは別としてすごいシステムですし、リクルートのような大企業だからできる大規模な広告手法だと思います。
販管費に占めるホットペッパービューティー(広告宣伝費)の比率が半端ない!
税理士として美容室の経営や財務状態を見ていると、販管費に占める広告宣伝費の比率が突出していることに驚きます。
販管費とは販売管理費の略で、損益計算書の中の区分のひとつです。具体的には給与や消耗品や雑誌代、家賃、電気代などの日常的な経費があります。(くわしくは『美容室の経理でよく使う23の勘定科目まとめ』を参照)
ホットペッパービューティーの勘定科目は広告宣伝費になりますが、販管費なかで大きな割合を占めています。具体的な金額は立地や掲載順位で異なりますが、専属の営業マン一人を雇うぐらいの人件費と考えると伝わると思います。
一般的な美容室の販管費で大きな比率を占めるのは『給与賃金』『地代家賃』がメインですが、ホットペッパービューティーの登場で広告宣伝費の比率がこれらに匹敵するようになりました。
つまり、美容室の経営者は、集客のために専属営業マンを雇う覚悟でホットペッパーに掲載するかを判断することになります。
ホットペッパービューティー依存のデメリット
ホットペッパービューティーに掲載することで集客できれば、ある程度の支出はやむを得ないと考えているかもしれませんが、依存することのデメリットもあります。
一つは、ホットペッパービューティーの運用が終了した場合の集客方法です。可能性は低いですが運営企業の問題で運営が停止することもあります。そんなときに一つの集客方法に依存していると、集客ができなくなるデメリットがあります。
また別の問題として、ホットペッパービューティーの掲載料が値上げされたとしても、他の選択肢がないために、値上げに従うしかないことです。独占状態のデメリットとして選択肢の幅が極端に狭くなることがあります。
まとめ:独占状態はメリットでもありデメリットでもある
これから開業する美容師のために、現状のホットペッパービューティーの集客の強さの理由と、経営上の問題点を紹介しました。
新規の顧客を集客するにはホットペッパービューティーは魅力的ですが、その反面、高い掲載料が経営を悪化させるリスクがあります。
他の選択肢もあれば良いと思いますが、現状の独占状態を考えると、運営企業の大きな問題が起きない限り、しばらくは一強多弱の状態が続くと予想されます。