税理士と顧問契約書を交わす際に、『多額の設備投資をする際は事前に税理士に報告すること。』という文言が入っていないでしょうか?
はじめて開業する事業主や社長など、税金の計算についてよく知らない人にとっては、なぜこんなことを契約書に書くのか不思議に思っているかもしれませんが、税理士にとってはとても重要なことだからです。
そこで、設備投資と消費税の還付について、そしてそれを契約書に明記する税理士の事情を紹介します。
設備投資と消費税の還付
消費税の計算方法には2種類あります。一つは、原則的な方法(以下『原則課税』)、もう一つは簡便的な方法(以下『簡易課税』)です。
原則課税は、売上に含まれる消費税から経費に含まれる消費税を引いた残額が納付税額となるシンプルな計算方法です。
簡易課税は、小規模な事業主のために、売上に含まれる消費税と決まった割合(90%~40%)を使って納付税額を計算する簡単な方法です。原則課税との違いは経費に含まれる消費税を考慮しないことです。
どちらの方法を選択するかは、売上高の制限がありますが、実務上は納付税額が少ない方法を選択することになります。
設備投資と消費税の還付
さて、ここから多額の設備投資に話が進みます。
多額の設備投資をする場合、支払う消費税も多くなるため、消費税の納税額に大きく影響します。
原則課税の場合は、売上に含まれる消費税より設備投資に含まれる消費税のほうが大きい場合は、払いすぎた消費税は還付されます。
一方、簡易課税の場合は、設備投資に含まれる消費税は考慮しないため、消費税に影響を全く与えません。
設備投資の消費税額への影響は、支払うの金額が大きくなるほど差が大きくなることになります。
事前報告を顧問契約書に入れる理由
税理士が、設備投資の事前報告を顧問契約書に入れる理由は、もうわかったと思いますが、税理士は消費税額の計算方法を適切に管理しなければならないからです。
消費税の計算方法の選択をするには、提出期限までに税務署に届出書を提出しなければなりません。提出が遅れると変更は認められません。
設備投資について事前に報告を受けられずに、消費税の計算方法が変更できないと、納税額に大きな違いが生じてしまうため、税理士の責任問題になる可能性があります。最悪の場合は訴訟のリスクも有るため注意が必要なのです。
まとめ:消費税に大きく影響する設備投資
設備投資と消費税の還付との関係性、そしてそれが税理士の顧問契約書に明記されている理由を紹介しました。
まとめると、消費税の計算方式によって多額の設備投資をした場合の消費税に大きな違いが生じる。
そして、消費税の計算方式の選択は、届出書の管理をしている税理士の責任問題に生じる可能性がある。ということです。
この記事の内容を理解すると、税理士と顧客のお互いにとって、多額の設備投資は相談しながら進めなければいけないことが分かってもらえるはずです。