美容室など個人事業主として開業した事業主の中には、数年後に法人に組織変更することがあります。これを『法人成り』といいます。(逆を『個人成り』と言う』
たまに法人成りをすると確定申告は必要なくなると勘違いする人がいますが、設立日が年の中途の場合は、その年の1月1日から法人成りの前日までは、個人事業主としての確定申告が必要となります。
その時の確定申告で注意すべきポイントとして、2つの所得が生じることを紹介します。これから法人成りする事業主さんは参考にしてみて下さい。
1月1日から法人の設立日までは事業所得
所得税では、所得の区分を10種類(事業所得、譲渡所得、給与所得、不動産所得、配当所得、利子所得、一時所得、山林所得、退職所得、雑所得)に分けて税金を計算しています。
美容室など一般的な個人事業主の所得は『事業所得』に区分され、そのなかで売上や仕入・減価償却費などを集計して所得を計算します。
法人成りすると、設立日を境に個人事業主であっても法人の従業員(と言っても代表取締役ですが)という立場に変わり、法人からの役員報酬という『給与所得』に変わります。
事業所得から給与に変わる法人の設立日の前日までは、事業所得としての確定申告が必要ということになります。
法人の設立日から12月31日までは給与所得
法人成りすると設立日からは役員報酬という給与所得に変わります。これは給料を毎月もらうサラリーマンと同じです。
そのため、医療費控除や1年目の住宅ローン控除など特殊なものがなければ、年末調整で所得税の計算は完了し確定申告は必要ありません。
ただし、年の中途で法人成りした場合は、上述のとおり『事業所得』も同じ年に含まれています。
そのため、法人の設立日から12月31日までの給与所得に、事業所得を含めて確定申告する必要があります。
法人成りしても申告期限は翌年3月15日
このように法人成りをした年は2つの所得が生じます。
この時によくある質問として、「確定申告を2回しなければならないのですか?」というものがありますが、申告自体は1回で済みます。
上述のとおり、所得税は10種類の所得があり、それぞれを集計して合計額を所得税として納税するため、法人成りした場合の『事業所得』と『給与所得』もそれぞれ計算した合計額が所得税となります。
そのため法人成りした場合は、ひとまず設立時に税務署に手続きをして、一年終了した時点でそれぞれの所得を集計して確定申告すれば問題ありません。
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まとめ:法人成りで変化する所得の種類
法人成りした年の確定申告は、『事業所得』と『給与所得』の2つがあるので、申告が必要ですよ。という記事を紹介しました。
個人の美容室が法人成りしても事業自体に大きな変化がないため、税金の計算も個人事業主と同じ感覚になりそうですが、手続き面では代表者と法人は別の人格として扱われます。
法人の代表者であっても、他のスタッフや従業員と同じ給料制になるため、自由に事業資金を使うと役員貸付金の問題が生じます。