確定申告シーズンによくある質問に「この支払いは経費で落ちますか?」というものがあります。
税金の計算では、「経費になる支出」と「経費にならない支出」があり、帳簿を作るためにはその判斷が求めらます。その判斷を間違うと税務調査で指摘される可能性があります。
税務調査で経費が否認される(取り消される)ということは、その分利益が増えるため税金が増えることになります。
そこで、確定申告初心者のために、個人事業主の『落ちる経費』と『落ちない経費』についてやさしく解説します。
なお、この記事は平成29年の法令に基づき、かつ個人事業主のための記事です。法人の場合と異なるところがあるので、予めご了承下さい。
落ちる経費とは
個人事業主の確定申告で落ちる経費(必要経費)とは、「原価」と「業務上の販管費」の2つです。
原価は、売上に直接連動する費用で、店販商品の仕入高や居酒屋さんの材料代など業種によって異なりますが、判斷を間違うことはないはずです。
販管費は、水道光熱費や広告宣伝費、損害保険料など売上高に連動しないものの、営業する上で必要となる経費のことを言います。
しかし、販管費の中には次のように、事業用と生活用の共同で使用しているものもあり、これらの支出「家事関連費」については、業務上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。
- 自宅兼店舗の地代家賃
- 自宅兼店舗の固定資産税
- 自宅兼店舗の水道光熱費
- 自宅用と商品配送用の車両など
家事関連費を必要経費として落とすためには、事業に必要であったことを明らかにしなければならないため、床面積や使用頻度から算出した事業割合を使ったり、交際費のレシートや領収証に誰との食事なのか記載することで明確にする必要があります。
落ちない経費
家事費
まず当然ですが、生活関連で支出するもの「家事費 」は、経費になりません。
家事費とは、事業に関係ない支払いのことで、生活費(食費、住居費、服飾代など)や社会保険料(国民年金、国民健康保険料、生命保険料、自宅の損害保険料など)があります。
個人で事業を開業すると、なんでも経費として計上したくなりますが、事業の支出と家事費は区別する必要があります。
その他の例
その他の落とせない経費としては、業務用の車両であっても駐車違反の罰金は経費になりません。また、税金を滞納したことによる延滞税や加算税も経費となりません。
業務上の税金は経費になるイメージがありますが、所得税と住民税も経費(租税公課)になりません。(個人事業税は経費になります。)
この他に、一緒に働く同一生計親族に対する給料も原則経費になりませんが、青色事業専従者給与に限り経費として落とすことができます。
[参考ページ]
タックスアンサー№2210│国税庁ホームページ
経理処理の方法
経理処理の方法でよくある質問が「事業用の通帳から家事費を支払った場合の帳簿はどうするの?」というものがあります。
家事費を現金で支払った場合は、レシートを除外して帳簿に計上しなければ問題ありませんが、事業用の通帳から国民年金や生命保険料を自動引落している場合は、帳簿の処理が必要になります。
具体的には「事業主貸」と言う勘定科目を使います。例えば、通帳から国民健康保険料が引き落とされた場合の仕訳は次のようになります。
事業主貸 / 預金 20,000円(摘要)国民健康保険料
この仕訳で処理することで、預金出納帳の残高は通帳の残高とズレることはありません。
まとめ:意外と狭い落ちる経費の範囲
個人事業主の『落とせる経費』と『落とせない経費』について解説してみました。まとめると次の費用が経費として落とすことができます。
- 事業に直接関連する支出
- 事業と生活費の両方に関連する支出のうち明確に区分できる支出
もしかしたら自分が思っていたイメージよりも狭いなと思っているかもしれませんが、これが法律上の経費です。
開業してはじめて確定申告する人は、参考にしてみて下さい。