宮部みゆき『天狗風 霊験お初捕物控』(以下『天狗風』)を読みました。
これまで何作も宮部みゆき作品を読んできましたが、相変わらずおもしろいな思える作品です。
『理由』や『模倣犯』『ソロモンの偽証』など大長編が醍醐味の作者ですが、本作は約600ページのコンパクトサイズで読みやすくてオススメです。
あらすじ&感想
江戸時代、下駄屋の嫁入り前の娘が、ある朝一陣の風(天狗風)とともに姿を消してしまった。
現場に居合わせた父親は、疑いをかけられ番屋に捕らえられ、解放後に自ら命をたってしまう。
不自然な失踪を神隠しだと疑う奉行からの依頼で、妖怪やもののけが見える不思議な力を持つお初が調べ始める。
捜査が進むと、嫁ぎ先が裏稼業をしていたり、下駄屋の娘の他にも同じように神隠しにあった娘が見つかる。
物語が進むに連れて単純な妖怪はなしではなく、人間の嫉妬や妬みが背景にあることが分かってきます。
物語には、算術で家を出た右京之介、人の言葉がわかる猫、老猫の和尚、神隠しを絶対に信じない同心などクセが強い登場人物がたくさん出てきます。
もののけや妖怪というと京極夏彦の作品を思い出しますが、京極夏彦作品がどこかダークで暗い雰囲気なのに対し、宮部みゆき作品は人間の心に焦点を当てた人情噺が特徴で登場人物の心情がよく伝わってきます。
同じ妖怪はなしでも作者が違うだけで作品の雰囲気がこんなに違うのかと思いましたが、どちらの作風も特徴があって大好きです。