ひとりの個人事業主として、美容室と雇用契約を結ばない美容師を『面貸し美容師』または『ミラーレンタル』と呼んだりします。
収入を得る点では一緒ですが、税金の計算では全く異なる処理となります。最近は、処理方法を巡って税務署から指摘されるケースも増えているようです。
そこで、面貸し美容師の税金について紹介します。
給与所得と事業所得
給与と外注の大きな違いは契約形態です。給与は従業員と店の雇用契約となりますが、外注は店と美容師の委託契約となります。両者の違いを簡単に言うと次のようなイメージです。
雇用契約を結んだ美容師は、従業員として店の指示に従い、一定の場所で一定の労働を提供することで、安定した給料をもらうことができます。
一方、委託契約を結んだ美容師は、ひとりの事業主として自己の責任と判斷で業務を行い、委託業務の成功の対価として報酬をもらうことができます。
所得税と源泉徴収義務
所得税と源泉徴収の取扱いで、給与と外注は全く異なります。
所得税は所得を10種類に区分し、給与は『給与所得』に区分され、支払う店側は、給与総額から一定の源泉所得税を天引きする『源泉徴収義務』があります。
受け取る従業員側は、医療費控除など特別な計算がなければ、年末調整で税金の計算は完了するため、確定申告の必要はありません。
一方、面貸し美容師の外注費(報酬)は、『事業所得』となり、店側に源泉徴収義務はありません。
(引用:国税庁 タックスアンサー№2792『源泉徴収が必要な報酬・料金等とは』)
受け取る美容師側は、一年分の収入と経費を決算書にまとめて、翌年3月15日までに確定申告書を提出する義務があります。
消費税の課税と非課税
消費税には、課税されるものと課税されないものがあります。
給与は消費税の課税対象にならない(不課税)ため、店側は消費税の計算で仕入税額控除を受けることができません。
給与を受け取る従業員側も、消費税が課税されないため消費税の納税義務はありません。課税売上1,000万円の判定に給与は含みません。
一方、外注(報酬)は事業に該当するため消費税の課税対象となります。そのため、店側は仕入税額控除を受けることができます。
従業員側でも、報酬は課税売上に該当するため、収入によっては消費税の納税義務が生じる可能性があります。
税務調査で否認された場合
このように税金の取り扱いがまったく異なる給与と外注ですが、税務調査で処理方法を指摘するケースがあります。
具体的には、店側は外注として報酬を支払っていたけれど、税務署側がその支払いは報酬ではなく給与だと指摘されるケースです。
外注が否認され給与と認定されると、店側に給与に対する源泉徴収義務が発生し、さらに仕入税額控除が取り消されます。そうなると店側は源泉所得税と消費税を追加で納付することになります。
まとめ:全く違う給与と外注
面貸し美容師の外注費(報酬)と給与の税金の違いについて紹介しました。
美容室の経営者は、美容師との契約関係をもう一度確認してみてはいかがでしょうか。
なお、雇用契約と委託契約の違いは、国税庁から下記の条件が示されているので参考にしてみて下さい。
[参考ページ]
引用│国税庁ホームページ